高血圧に対する運動処方

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さて、11月も中旬を過ぎ、だいぶ過ごしやすい季節がやってきました。

しかし、この時期はアッという間。

いよいよ寒い季節がやってきます。

寒い季節に気をつけたいのが「血圧の変動」で、特に中高年代の方にとっては気をつけたいのが「高血圧」です。

 

●血圧とは

まずそもそも血圧とは「心臓から送り出された血液が全身へ運ばれる際、動脈の内側にかかる圧力」のことです。

血圧を測定すると「上」と「下」の2つの数字が表示されます。

「上」は「収縮期血圧(最高血圧)」と呼び、心臓が収縮し、最も強く血液を送り出そうとする時の数字です。

全身へ血液が送られる時を測定しているので、動脈へかかる圧力は強くなります。

「下」は「拡張期血圧(最低血圧)」と呼び、心臓が拡張し、全身から心臓に血液が戻ってくる時の数字です。

血液は静脈を通って心臓に戻るため、動脈へかかる圧力は少なくなります。

 

血圧=心拍数×1回拍出量×末梢血管抵抗

という公式で算出されます。

・心拍数は、心臓が1分間に拍動する回数を指します。成人では60~70回程度が平均値です。

・1回拍出量は、心臓から1回の拍動で送り出される血液量です。成人では約70mlです。

・末梢血管抵抗は、血液の粘性・血管壁の弾性・血管の収縮拡張状態、などを指します。

上記のような要素で血圧は求められるため、血圧は常に変動しています。

運動をして心拍数が上がれば血圧も上がります。

喫煙、熱いお風呂に入る、緊張をする、といったちょっとしたことでも心拍数があがるため血圧も上がります。

また、寒い季節は体温保持のため血管が収縮し細くなります。

すると、狭くなった道を血液は通ろうとするため、必然的に血圧は上がります。

また、その血管自体が固くなっていれば、さらに血圧の上昇を助長します。

こういったことから、中高年の方において冬は血圧の変動に気をつけなければいけません。

 

●日本人の高血圧事情

少し古いデータですが、2010年に行われた国民栄養・健康調査データによれば、日本人の約4,300万人が高血圧であると推計されています。

平成26年に厚生労働省が実施した「国民健康・栄養調査報告」によると、40〜70歳の高血圧有病率(140/90mmHg以上または降圧薬服用中)は、男性で60%、女性では40%を占めています。

さらに、高血圧患者の33%は、自分が高血圧であることに気づいていないといわれています。

2019年に日本高血圧学会からの発表によると、約4,300万にいるという高血圧者のうち、適切に血圧コントロールされているのは1,200万人。

残りの3,100万人が管理不良に分類され、そのうち1,400万人が自らの高血圧を認識しておらず、450万人が高血圧を自覚しているが未治療、1,250万人は薬物治療を受けていますがきちんと管理されていないとされています。

高血圧は脳卒中や心筋梗塞、腎臓病などの重要なリスクファクターとなります。

日本人の死因において、心疾患は2位、脳血管障害は4位となっています。

高血圧を予防・改善することは、重大な疾患を予防することにもつながります。

※高血圧は病名であり医師のみが判断をすることができます。自己判断せずに医師の診断・指示を仰いでください

●高血圧に対する生活習慣の修正

①減塩:食塩6g以下 / 日

②野菜・果物を積極的に摂取し、飽和脂肪酸・コレステロールの摂取を控える

また、多価不飽和脂肪酸・低脂肪乳製品の積極的な摂取。

③適正体重の維持(BMI25未満)

④軽強度の有酸素運動を毎日30分、または1週間に180分以上行う

⑤節酒:エタノールとして男性20ml-30ml / 日、女性10-20ml /日、以下に控える

⑥禁煙

※日本高血圧学会より

 

 

日本高血圧学会は、上記の6項目を生活習慣の修正項目として挙げています。

また「降圧薬服用患者においても降圧作用の増強や投与量の減量につながることが期待できるため、生活習慣の修正は、すべての高血圧患者に対して指導すべきである」としています。

引用:高血圧治療ガイドライン2019 P64

 

食塩の量については、年齢・体格・既往症などにより上下しますし、野菜や果物の摂取(カリウムの積極的摂取)については糖尿病や腎臓病の有無などによって量が変動します。

まずは、医師や管理栄養士の方などに指示を仰ぐことが必要です。

私たち運動指導者が大きく関わることができる項目が「体重管理」「運動の提供」です。

BMIはBody Mass Indexの略で体格指数と呼ばれ、「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」という公式で求められます。

BMI25以上が肥満と分類されますが、BMIが25-29の人は、BMIが20以下の人に比べ、高血圧の罹患率が1.5~2.5倍になると推定されています。

また、肥満は高血圧のみならず糖尿病・脂質代謝異常・脂肪肝・心疾患・脳血管疾患など、様々な内科的疾患のリスクとなります。

そして、メタボリックシンドロームの判断には、腹囲が男性85cm以上・女性90cm以上が用いられます。

腹囲を減らすことは内臓脂肪の減少を意味します。

つまり、ただ体重を減らすだけではなく、腹囲を減らすことが高血圧の改善にとっても重要であると言えます。

 

次に、私たちの本職である運動指導です。

運動がもたらす効果は枚挙にいとまがありません!!!

血圧低下のみならず、体脂肪の減少・腹囲の減少・インスリン感受性の改善・2型糖尿病の予防・血清脂質(中性脂肪)の改善・骨格筋量の維持・全身持久力の改善・メンタルヘルスの維持・認知症の予防、等、数多くの効果があります。

高血圧には軽い有酸素運動が推奨されています。

これは、筋力トレーニングが有酸素運動に比べると血圧の上昇が著しいことからだと考えられます。

「軽い有酸素運動」は最大努力時の40~60%とされています。

専門的には運動強度40%は有効限界、60%は安全限界と呼ばれています。

しかし、運動強度が40%や60%と言われてもピンときませんよね。

そこで「カルボーネン法」という公式を使うことで、その運動強度時の心拍数を求めることができます。

カルボーネン法:(220-年齢-安静時心拍数)×運動強度(%)+安静時心拍数

例えば、50才・安静時心拍数70拍。運動強度40%とするならば・・・

(220-50-70)×0.4+70=110

となるため、心拍数が110であれば運動強度が40%であると推定できます。

今はスマートウォッチで心拍数を気軽に測定できるため、そういうったデバイスを活用することも非常にお勧めです。

パーソナルトレーニングの現場においても、高血圧と診断されているお客様へのレッスン時には、実際にお客様の手首で心拍数を測定しながらトレーニングを進めていくこともあります。

私たちのスタジオでは、筋力トレーニングはもちろん、自重を利用したエクササイズやステップエクササイズを行うことで、体力に応じた有酸素運動を行うことができます。

 

また、アルコールの過度な摂取は血圧の上昇を助長し、1~2週間の節酒で降圧効果が認められているため、適量にしたいものです。

喫煙は心拍数を上昇や、血管を収縮させる働きがあるため、高血圧のリスクファクターとなり得ると考えられています。

むしろ心疾患や脳血管疾患のリスクとして確立しているため、控えたいものですね。

 

私たちは、ダイエットやボディメイクを通じて、皆さまの生活をより健康的で活動的な毎日にしていきたいと考えています。

様々な情報があふれているからこそ、正しい知識・方法によりトレーニングを行うことで効果を得ることができます。

ただ重たい重りを担ぐだけ、ただ糖質制限をするだけ、ではなく、より良い毎日を過ごせるようにトレーニングをしていきましょう!!

 

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